何年か前に、音楽と全く関係ない、とある仕事の研修に行った。


そのとき、一人の若い男性(20代くらい?)が一緒にその研修を受けていた。

彼は身のこなしがすごくきれいで、スタイルも良かったので、休み時間中に思わず

「何かスポーツでもやってるんですか?」

と聞いたら、

「いや、スポーツではないんですが、ヒップホップという黒人の踊りをやっています。」

と爽やかに答えた。


もちろん彼は、私が音楽をやっていることを知らない。

彼にとっては、私は初対面の、ただのしょぼくれたおじさんである。


そういうときに、なるべく気を利かせて、自分のやっていることを分かりやすく説明してくれたんだと思う。


しかし、私はこのときけっこう衝撃を受け、

「ここまで分かりやすく噛み砕いて説明できるのはすごいなあ…」

と感銘を受けた。


(まー人種的にどうだとか言い出すとややこしいのでここでは触れず)



自分も、初対面の人に、成り行き上どんな音楽をやっているか、聞かれることはよくあって、その度にどう答えようか今まで悩んだりしてきた。


最近はもうどうでもよくなってきて、「バンドでキーボードをやっています」とか、「電気グルーヴみたいな音楽をやっています」とか、適当に答えることが増えてきたが、それでも内心ちょっと「ざわっ」とした気分になりながら答えているのである。


まー相手にしてみれば、単なる社交辞令で聞いてくれているだけなんだから、どう答えようが別に何の問題もないんだけど、相手によっては

「ここまで噛み砕かないと伝わらないのか…」

と驚くこともけっこうある。


「シンセサイザー」って言葉を知らない人もいるし。



そんな中で、

「ヒップホップという黒人の踊りをやっています。」

という彼の簡潔な説明は、私の心に深く刺さった。





それならばさしずめ私の場合、


「テクノというドイツ人の踊りをやっています。」

ということになるのだろうか?


いや、実際には踊りそのものをやっているわけではないので、

「テクノというドイツ人の踊りの音楽を作っています。」

ということになるのだろうか。


ややこしいわ。


というか、ギャグにしか思えない。


かつてアトム・ハートがクラフトワークのラテンカヴァーをやったとき、

「ドイツの踊り」

という秀逸なタイトルをつけたことが思い出される。



まーそれでも、自分の所属するクラスタの完全に外にいる人たちに、分かりやすく説明できるスキルは大事だよね。

そうでないと、ただのマニアの集合体になってしまう。


そんなことを考えさせられる出来事でした。


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えーと、「ふだん運動不足だったり体を動かしたくても家が狭かったりする人が、いろんな音楽を聴いて自由に踊ったり踊らなかったりできる集まり」です!

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