Easy + Nice レーベルのblog

アンビエント・ダブテクノなどを作る電子音楽家・Wakiによるブログ。 元々は運営している音楽レーベル「Easy + Nice」の情報発信のために立ち上げたものだが、最近は音楽制作全般や日記的なもの、哲学的なものが中心になってきている。

2020年12月

今年はEasy + Niceレーベルでも自分のBandcampページでも、けっこう多くの作品をリリースした。

そこでこのページでは、2020年にリリースされたレーベルの作品と、自分の作品とを紹介していきます。



Easy + Nice からのリリース


「My Low Xeats」Masashi Ximoto

IDMやハードなノイズ、アンビエント作品を作っている日本人アーティストによる、ローファイ風の作品集。彼の普段の作風とは少し変わって穏やかな感じだが、その分聴きやすいバランスとの購入者評。




「Endless Snowfield」The Quietist

UKのアーティストによるアンビエント作品。寒い季節に合うと思って、この時期(12月)にリリースした。リラックスできる、ほっこりした内容。「聴いた瞬間、静かな島に連れていかれるようなアルバム。」(購入者レビュー)





他レーベルからのリリース

Oscillator」V.A.

Beatport(世界的なDJ向けの音楽販売サイト)のチャートで一時トップ10入りを果たす快挙を達成!Muzugen Muzicレーベルさんのコンピレーション・アルバムに私も1曲提供した。一台だけシンセを選んで、それで一曲を完成させるという趣向で、16人の日本人アーティストが参加した。
fad17bdf-b807-46de-832e-59f30d80adde



個人的な作品

「寝る前に聞くやつ」

SunVoxというソフトをルーパー代わりにして作ったアブストラクトな即興作品。「深海にいざなわれるような音楽。」(購入者レビュー)




「磨かれて、澄み切った日本のテクノ」

SunVoxで作ったテクノとしては、一番最新のもの。この手法が非常に洗練されてきて、ある意味行きついた形になった。それで一度このやり方から離れる必要があると思って、以降はいったん別のことをやることにした。「『鉄骨』が特に好きです。」(購入者レビュー)




「短くて聴きやすいローファイ・ヒップホップ」

書き溜めていたローファイっぽいスローな曲を集めたアルバム。タイトルとジャケットデザインはコンビニのPB商品のパッケージをイメージした。本当に「聴きやすい」かどうかは人によると思うが、自分としては極力そういうつもりで作った。




「YouTubeで」

夏に躁状態になって、自分で歌を歌い80年代風のシングル曲を作成。ジャケットもふざけて暑苦しいアーティストの感じを出したかったが、振り切り方はやや中途半端になった。




「2020」

このクレイジーな年を締めくくる総決算的な作品として、しっかりしたフルアルバムを意図して作成した。サンプルを多用し、カラフルでポップな、流れのあるアルバムになったと思う。ネガティブな世相を考慮し、なるべく元気でポジティブな内容になるよう心掛けた。今年最も売れた作品。




「極めて実用的な音楽」

「2020」を作った反動で、またがっつり内省的なドローンの即興に戻った。しかしそれ以前の自分のドローンと比べると、だいぶ聴きやすくなっているように思う。やはり自分の制作の姿勢がどこかで変わったのかもしれない。いまフリーダウンロードできようになっています。





こうして振り返ってみると、この一年は「どうすれば自分の音楽がポップなものになるのか」「どうすれば人に喜んでもらえるか」という課題のもとに試行錯誤した年だったと思う。

「聴きやすさ」というのが一つのテーマかもしれない。

それは「妥協」ということではなくて、より客観的に自分の曲を聴こうとしている、ということだと思う。


ともあれ、今年一年は本当に沢山の皆様に応援していただき、おかげさまで音源も沢山買っていただきました。本当に感謝です。この一年ありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いいたします。

Waki拝

Photo_1366x745_2020-12-26_17-48-33

今年はけっこうYouTubeの動画を作ることに注力した。

まーコロナのこともあるし、ネットに力を入れるしかなかったというのもあるけど、何かやらなければと思っているうちに、動画の制作という行為自体にハマってしまった感がある。

ただ、私にはどうも非常に飽きっぽいところがあり、10月あたりからその勢いはちょっと失速してしまった。

それと入れ替わりというか、またブログの記事が増えてきているような気がする。

寒くなって行動が内向的になると、文章の方が書きやすいのかもしれない。


まあとにかくそういうわけで(?)、ここでは今年Easy + NiceのYouTubeチャンネルで最も多く再生された10本の動画を紹介していこうと思います。



第1位「本物の京都人による、京都弁ガチ添削!」

関東人の私が、インチキ京都弁でナレーションをする紀行動画を作成したのだが、これを本物の京都人・kasaburaさんにリアルタイムで見ながら添削してもらったもの。けっこうロングランで見られている。単純に面白いのかもしれない。




第2位「初めてのSunVox(~前編)」

日本ではまだまだマイナーな音楽ワークステーション・アプリ「SunVox」の入門動画。これが再生回数2位ということは、実は徐々にSunVox愛用者の人口が増えつつあるのかもしれない。当ブログの「SunVox情報まとめ」という記事も、最近非常にアクセスが増えてきている。この動画は、初めての人にもなるべくとっつきやすい解説を、と思って作りました。




第3位「Waki at home SunVox Live 20200411」

今年はリアルなライブはあまり出来なかった。その代わりYouTube上でのライブはけっこうやったと思う。これは遅めのテクノ作品を中心に、自宅で演奏したライブ演奏の録画。ドコスコドコスコ。




第4位「Dubtechno with SunVox」

リハーサルスタジオで去年録ったダブテクノの演奏。自分の演奏の手元を映している数少ない映像である。とは言っても手は殆ど動いていないけど。この曲はその後、Yotsume Musicからアナログ盤でリリースされた。




第5位「丑三ツ大学 純セレブ音楽講座 特別パフォーマンス」

音楽家の片岡祐介氏と経済学者の安冨歩氏が主宰する「丑三ツ大学」の特別パフォーマンス。この動画と、遠隔地で演奏している片岡氏の動画を同時再生し、ミックスして聴くことにより、オリジナルなバランスでデュオ演奏を楽しむことが出来るようになっている。




第6位「純セレブスピーカをスタジオモニターとして使ってみる」

片岡祐介氏の開発する「純セレブスピーカ」を、音楽制作の現場で使うとどうなるのか?その長所と欠点、可能性を探る。当時は実際に「純セレブスピーカ」をモニターとして使っていました(現在は別のスピーカを使用)。




第7位「Dubtechno pettern with SunVox」

去年の動画。SunVoxを使ったダブテクノの演奏とその画面の様子。第4位のもそうだが、この手のものは主に海外勢が見ていると思われる。




第8位「岡崎ワンダー夏祭り サンポーヨシ」

今年は殆どイベントが行われなかったが、その中で決行された数少ない夏祭り「岡崎ワンダー夏祭り」の様子と、そこでの音頭バンド・サンポーヨシのライブ演奏。ドキュメンタリータッチの映像です。




第9位「京都府の補助金申請してみた」

京都府の文化事業支援のための補助金を申請した話。アーティストの皆さんには興味のある話題だったのかもしれない。結局このときの申請は一度取りやめになり、次節でもう一度別件で申請した。いま進めているアナログ盤のプロジェクトは、この2度目の申請によるものである。




第10位「Waki 鴨川ライブ(無観客)」

鴨川のほとりで季節の良い頃、一本のマイクとディレイだけでやったパフォーマンス映像。なぜか圧倒的な支持を得て、私自身は逆に狼狽した。まあこの時期の鴨川は本当に美しいからね…。





とこんな具合で、以上、今年再生の多かったYouTube動画でした。

手作り感満載の素人くさいチャンネルではありますが、末永くお付き合いいただけるとありがたいです。

来年もよろしくお願いいたします。

Easy + Nice YouTubeチャンネル

Photo_5464x2980_2020-12-08_22-39-32

私は日本のポップスを聴いていても、たいてい歌詞がアタマに入ってこない。

どうしてもメロディーとかサウンドとかコード進行とか、音楽的な側面の方に耳が行ってしまうからだ。

それでも、たまにそれを突き抜けて自分に届いてくる歌詞というものがある。


今日は、橋本愛の歌う「木綿のハンカチーフ」を聴いて不覚にも涙してしまった。


こういうものは、演奏の良さもあるけど、やっぱり「メロディー」と「歌詞」のコンビネーションがよほどうまく出来ているんじゃないだろうか?





そういえば、知り合いのバンドで「ちゃぶ台バンド」というのがあって、彼らの持ち歌に「トム・ピリビ」という曲がある。

その歌はこんなふうに始まる。


 トム・ピリビは2軒 お家を持っている
 お城のように 大きなお家

 トム・ピリビは2せき お船を持っている  
 宝を探しに 出かける船


そう。トム・ピリビは大金持ちなのである。歌詞は次のように続く。


 幸せな トム・ピリビ
 何でもできる すてきな人

 仲良しに なりたい  
 大金持ちの トム・ピリビ


トム・ピリビは金持ちで、何でもできる。だからみんなが憧れる。誰もが友達になりたいと思うわけである。そして2番でも、トム・ピリビのすばらしさが語られていく。


 トム・ピリビは2わの オウムを飼っている  
 何でも知っている おしゃべりオウム

 一羽は赤で 一羽は緑
 魔法の国の 魔法の鳥


そんなわけで、また歌い手はトム・ピリビは「幸せな人」、「何でもできる人」、「仲良しになりたい」と讃える。


 幸せな トム・ピリビ
 何でもできる すてきな人

 仲良しに なりたい
 大金持ちの トム・ピリビ


しかし、3番で突然どんでん返しが起こる!

なんと、トム・ピリビの今までの話は全部ホラだったのだ…。


 誰もが好きな トム・ピリビには
 一つの悪い 癖がある

 トム・ピリビの癖は うそつく癖
 お家も鳥も つくりごと

 おおぼらふきの トム・ピリビ


さあ、どうなるんだろう?自分をよく見せたいがために、大金持ちで幸せであると吹聴していたトム・ピリビ!



…しかし、予想に反して、歌い手はこのトム・ピリビの嘘に対してこう続けるのだ。

 
 だけどとっても お人好し
 仲良しに なりたい
 すてきな人 トム・ピリビ…


私の涙腺はいつもここで決壊する。


全てうそだったのだ!大きな家も、船も宝探しも、魔法の鳥も、すべてすべて!


しかし歌詞は何事もなかったように、「仲良しになりたい」「素敵な人トム・ピリビ」と繰り返す。



ここには許しがある。


無条件の愛があるのだ。



だから私は、この曲のことを考えるといつも滂沱の涙を流すのである。



「トム・ピリビ」を全く泣かずに最後まで演奏する「ちゃぶ台バンド」はすごいと思う。

これは決して皮肉ではなく、ちゃんと私を泣かせるような演奏をしているのに、本人たちは泣かずにいる、というところがすごいのである。

まさにプロフェッショナルとしかいいようがない。


Photo_1366x745_2020-12-26_17-57-27

ちゃぶ台バンドのCDはこちら

最近は寒いので、家にこもってシンセを弾いてばかりいる。

この前買ったソフトシンセのPigments。

このシンセについてはこの前も書いたんだけど、本当によく出来てると思う。

多分コンセプト的には、今ではそんなに新しくもないと思うんだけど、なんか弾いてるとついつい時間が経ってしまうので、どこかが良く出来てるんだろう。


良いシンセというのは、演奏者と楽器の間でずっと対話みたいのが続いていくものだ。


Pigmentsは間違いなくいいシンセなんだけど、やはりコンピュータ上でソフトウェアとして動いているせいもあって、多少欠点がある。

まず第一に重たい。なのでよく音切れする。

タスクマネージャーを見てるとそんなにCPU消費していないように見えるときでも、けっこう音切れするので、ライブとかで使うのにちょっと不安がある。

このシンセでライブ配信もしたいけど、多分配信のソフトと同時に使ったらコンピュータの処理が追い付かないんじゃないか。

考えてみれば、ハードウェアはまず音切れしないように出来ているはずなので、そこはやっぱりハードウェアの一番の強みじゃないかと思う。


あと、これは自分にとって特有の観点かもしれないけど、波形を読み込むときなどに音が止まるのは困る。

これはVITALなんかだと起こらないことなので、やっぱり改善できるならしてほしいポイントだ。

自分はとにかく、音をホールドして持続した状態で、パラメータをいじって音色を変化させていくのが好きなので、途中どんな操作をしても絶対に音が止まらないようにしてほしいのだ。


まあでも文句があるとすればこの2点ぐらいかもしれない。


そこを補って余りある魅力がこのシンセにはあるから、ついいじってしまうんだろう。

何か有機的っていうか、音に奥行きみたいなのがあるんだよな~。



Photo_1366x745_2020-12-10_14-20-09



冬の夜にただただシンセを弾いているだけ。曲をつくるわけでもなく、録音もあんまりしてない。
(音色は作ってるけど)

他の誰が聴くわけでもない。

自分とシンセの間で音の対話があるだけ。



これはPigmentsを使って作ったドローン集(最初の頃はけっこう録音してた)。フリーダウンロードできます。投げ銭をしてもらえると喜びます。


春頃にEasy + Niceからアナログ7inchを初めてリリースするということで、いま制作が進行中です。

私自身はアナログ盤をプロデュースした経験がないのですが、アナログ制作の経験が豊富なHANKYOさんに助けていただいているので、制作は順調に進んでいます。

京都府の補助金も無事降りて、いまは仮払金の入金を待っているところ。


前回の記事では、リミックス素材のレコーディングと、オリジナル音源のプレマスタリングの様子をお伝えしましたが、その後リミックスの制作とアナログマスタリングまで終わり、デザインもだいぶ決まってきました。

1月中にプレスの会社にデータを納品する予定です。


内容的にはドリーミーなインディーポップという感じ。


アーティストのSATOさんは、本来プログレッシブでトリッキーな作風などいろいろ出来る人なのですが、今回はギター弾き語りで、メロウなシングル向きの内容になっています。

B面は私がリミックスを担当しています。

マスタリングの得能さん、デザインの原さんといったHANKYOさんまわりの優秀なスタッフを紹介していただいて、いろいろ新しい経験をさせてもらっています。

Map_4808x2772_2020-12-08_17-18-24



12月15日にリリースした、UKのアーティスト「The Quietist」のアンビエント・アルバムです。冬にぴったりのほっこりした内容。リラックスしたい方に。


↑このページのトップヘ