界隈(?)にはソルフェジオ周波数というものがあり、通常我々が聞いているA=440Hzよりも心身に好ましい基準ピッチが存在すると言われている。

たまにA=432Hzで演奏してほしいという要望を受けることがあるが、それはおそらくこのソルフェジオ周波数のことを指しているんだろうと思う。

自分も今まで何度かこのA=432Hzを試したことがある。

こういうピッチの変更が簡単にできるのは電子楽器のいいところ。


最近また、自分のYouTubeチャンネルで予告なしに行っているシンセサイザーの即興ライブでも、このA=432Hzを使っている。





こうしたいわゆる「ソルフェジオ周波数」が身体にいいかどうかは自分としては確かめようがないが、少なくとも演奏しはじめたときに、ちょっとした違和感を感じるのは確かだ。

大体において、基準ピッチが低いほどやや弛緩した感じになり、高いほどより覚醒した感じに聞こえるという傾向があると思う。

A=432Hzで演奏すると「あれっ」と思うのは、普段聞いたり弾いたりしている音楽の殆どがA=440Hzを基準にしているので、その基準ピッチが思った以上に自分の身体にしみ込んでおり、ずれを感じるからだ。

自分に絶対音階はないと常々思っていたが、ある音の高さが周波数レベルで自分の認知のどこかに設定されていたということに驚きを感じる。

さて、私のYouTubeライブでも弾き始めはそういう432Hzに対する違和感とともに、ちょっと弛緩した感じを味わうのであるが、弾いているうちにだんだん慣れてきてしまい、あまり何も感じなくなる。

それはちょうど新しい眼鏡をかけたときのような感じで、最初は視界がちょっと歪んで見えるのにだんだん慣れてきてしまうのに似ている。

人間の認知が、環境に合わせて修正するのだと思う。


さて、界隈でまことしやかにその効果がうたわれているこのソルフェジオ周波数だが、私はそれについては正直なんとも言えない。

「効果がある」ということを否定もできないし、「絶対にある」とも言えない。

プラシボ効果を含め、それを信じる人が聴いて気持ちいいと感じたり楽しんだりするのであれば、それはひとつのオプションとしてありだと思う。

少なくともA=440Hz以外のピッチで聞くことは認知にとって新たな視点を与えてくれる可能性がある。


私はそもそもこういう疑似科学的なもの、スピリチュアル、オカルト・陰謀論が大好きなのだが、それはやはりそこに夢とロマンがあるからで、いわゆる科学的な定説となっているもの以外について考えたり試したりするのはとても楽しいことだと思っている。

そして楽しいことはいいことだと思う。

このような態度が行き過ぎて社会問題になる場合もあるとは思うが、だからといってこのジャンル全体を否定したくはない。

それは個別に判断すべきことだ。

ナイフで犯罪が起こるからといってナイフ自体を規制するのは行き過ぎだ。

また、一見馬鹿げて見える説の中に真実がないとも言えない。これは河原の砂金を探すような行為でもあり、大半のゴミの中にも価値のあるものが埋もれている可能性はある。


だから偏狭なスピリチュアル・陰謀論否定者は、頑迷な陰謀論者と同じくらい視野が狭いと私は思っている。