Easy + Nice レーベルのblog

アンビエント・ダブテクノなどを作る電子音楽家・Wakiによるブログ。 元々は運営している音楽レーベル「Easy + Nice」の情報発信のために立ち上げたものだが、最近は音楽制作全般や日記的なもの、哲学的なものが中心になってきている。

カテゴリ: インタビュー

京都芸術センターの制作室を借りて10日ぐらい経ったころ、明らかに体調を崩して少し休むことになった。

右耳がものすごく痛くなり、頭がズキズキして、医者に行ったら外耳炎だと言われた。

ちょうどその頃、突然家のエアコンが完全に壊れて、病状とともに暑い夜が耐えられなくなったので、たまらず家主に相談してエアコンを新しい物に変えてもらった。

この時期にエアコンを新調できたのは本当にラッキーだったと思う。そのあとすぐに梅雨が明け、猛暑がやってきたからだ。

抗生物質をもらい、5日ほどで外耳炎はおさまった。

考えてみれば、芸術センターに入る前はずっと家にひきこもっていたので、急に忙しくなってストレスも結構あったのだと思う。

6月13日に旧友のモノクロームサーカス坂本公成氏と会ってインタビュー動画を撮り、14日に高橋ジョルジュさんとの対談とライブ配信、15日には戸谷さんとのユニット・Drone Tribeのライブ配信、と続けざまに企画をやってだいぶ疲れていたところに、17日の中村さんとの撮影があり、芸術センターまでの道案内動画を撮るころにはもう耳が痛くてたまらない状態だった。

まあもともとそんなに体が丈夫な方ではないうえに、年も取ってきているので無理をしないに越したことはない。

これからはスローペースでやっていきたいと思う。



ダンスグループ・モノクローム・サーカスのインタビュー。ダンスシーンあり。


高橋ジョルジュさんとの対話とライブ。


スーパー京女・中村さんによる芸術センターへの道案内。


仏教徒・アーティスト慧海さんとの対談。




[今後のお客さま予定]

プロの素人・えブチみほさん登場!

テクノアーティスト・SASAKI HiroakiとThe Human & Assets登場!

シン民族音楽グループ・瓜生山オーバートーン・アンサンブル登場!

私にとっては今世紀最大の衝撃的な事件のひとつだったアレクサンダー・ゾロトフ氏のインタビュー…。


そのあまりにも貴重な内容を、昨日震える手で掲載したのですが、予想外というか、案の定というか、やはりDTMクラスタのごく一部、もしくは日本にはまだまだ少ないSunVoxユーザーの一部にしか、刺さらなかったようです…。


というか、むしろ、ふつうの人にとっては、何のことかさっぱり分からなかった可能性さえある…。


しかし!私の興奮はまだ冷めやらない…ッ!

語り足りない!!


というわけで、殆どの読者を置いてきぼりにしているこの企画ですが、このインタビューで私が個人的に興味深かった点を、さらに掘り下げて解説していきたいと思います。



①まず、Alexander Zolotov氏は、思っていたよりもずっと若かった!

今までずっとメールのやりとりはしていたんですが、何となく勝手に「ヒゲぼうぼうの老人」みたいな人を想像していたんですね。

それというのも、多分自分の中で、Pavel Tiという人とごっちゃになっていたんだと思います。

pavel ti
   Pavel Ti 氏

もしかしたら、Pavel Ti 氏とAlexander Zolotov氏は、同一人物なんじゃないか…?

ぐらいに思っていました。


しかし、それは私の勘違いの可能性もあるので、わざわざ「Pavel Ti 氏はあなたの友人ですか?」という質問を入れたんですね。


結果的には、彼は全くの別人物で、Alexander Zolotov氏は、もっと若い人でした。



nr2_50per


エメリヤ・エンコ・ヒョードルを彷彿とさせるAlexander Zolotov氏。

強力な打撃技を持っていそうです。


ウラル工科大でプログラムを学んだが、実際にはそれよりずっと前に兄からプログラムの手ほどきを受けており、さらにその前にデモシーンに関わっていた…。

そして、このデモシーン時代が1995年だったことを考えると、

どう計算しても、彼はまだ30代くらいのはず。

若い!(後註:1983年生まれだそうです。)

nr1_50per

たしかに、写真からも、そんな感じが伺えます。

いやー…優秀な人っているもんだなあ…。



②SunVoxの開発は2006年に始まった。

ということは、開発を始めて12年くらいということです。

氏は、この間にものすごいペースで改良を続けています。

sunvox1

この画面は最も初期バージョンのもの。

sunvov193_2

12年を経た現在のもの(↑)と比べても、インターフェースが殆ど変わっていないことに気づくと思います。

骨太のコンセプトにしびれますね。

しかし実は、中身はものすごく進化しているんです。

やれることは随分増えているのに、基本的な使い勝手がほとんど変わっていない。

何度も力説したいですけど、こういうところ本当にみんな見習ってほしい!

バージョンアップの度に訳が分からなくなるソフトやめて欲しい!!!



③SunVoxの心臓部分はモジュラーシンセである

もともとSunVoxは、トラッカーとして開発されたわけではなく、ピアノロールで作ろうと思っていた、という話がありました。

そんなわけで、シーケンサー部分についてはわりと「必要だからつけた」っていうぐらいの感じですよね。

トラッカーの優位性については、氏も別のところで語ってはいましたけど。


あくまでも心臓部はモジュラーだと。

モジュラーでガンガン遊んでくれと。


そのへんが次に取り上げたい点、

④SunVoxの想定しているユーザー…音実験の好きな人、新しいことに挑戦する人


につながってきますね。


「自由に新しいことに挑戦してくれ!」と。

そこがこのソフトの一番楽しいところだと思います。

音楽制作ソフト界のマインクラフト的存在ですね…。

MAX/MSPほど難しくないのもありがたいです。



⑤DAWはMTRのメタファー

DAW全盛のこの時代に、彼がDAWについてどう考えているのか、非常に興味がありました。

彼の答えは、「DAWはMTRのメタファーである」というもの。

確かに…。

これは腑に落ちました。

昔の話になるけど、もともとは、MTRというものがあって、手弾きでレコーディングしたり、シーケンサーを同期させてシンセを走らせたりして、ひとつひとつトラックにオーバーダブさせていったりしたわけですよね。

DAWがそういった音楽制作の手法を、引き継いでいるツールなのは確かです。

われわれはDAW時代にどっぷり漬かりすぎているので、そもそもこれがどういうものなのか、考えてみもしなくなってしまっています。

しかし、彼の言葉を聞くと、「DAWというのは、音楽制作における一つのやり方に過ぎないんじゃないか」というふうにも思えてきます。

ユーロラックのモジュラーシンセのブームなんかは、そういう理知的というか、計画的なDAW手法に対する、ひとつのパンク的なアンチテーゼだったのかもしれませんね。



⑥どのプラットフォームでも動く理由…その方が楽しいから

これにはウケました。どのプラットフォームでも動くのは便利だけど、どうしてそこまで執拗にこだわるのかな?というのが知りたかったんですけど、

「その方が楽しいから」

もう何も言うことはありません…。




⑦完全に無償なわけではない

フリーでソフトやVSTを配布しているデベロッパーには、いつもこの質問をしたくなるんですよね。

「こんなにすごいものを、なぜ無償で配っているの?」

だって、ソフト開発ってものすごく大変だし、労力がかかるじゃないですか。そして人の役に立つものを作っているわけだし…。

Alexander Zolotov氏のスタンスは、非常に明快で、

「PCやMacなどではフリーで配布して宣伝、スマホやタブレットで売る」

というものでした。

まあ確かに、私も最初PCでしばらく使ってから、そのあとでAndroidスマホ上でも動かしたくなって購入しましたし。

この戦略は、意外と悪くないのかも…。




というわけで、SunVox愛好者以外にはあまり意味がない内容だったかもしれませんが、私のたぎる思いを語らせていただきました。

本当は、100回ぐらい同じことを繰り返して言いたい!

しかしそれは、ボケ老人になったときまで取っておくことにします。

このインタビューを読んで、少しでもSunVoxに興味を持ってもらえたら嬉しいです。







※来る8月22日、Easy + Nice から久々の新譜がリリース!今度は音頭だ!京都の音頭バンド・サンポーヨシによる1stアルバム!!リンク先(8月22日に解禁)

EN013

私wakiも現在メインで音楽制作に使っていて、密かに世界最高の制作ツールのひとつと考えている、ロシアの「SunVox」というソフトについては、ときどきこのブログでも取り上げてきましたが、今回なんと、開発者のアレクサンダー・ゾロトフ氏に直接メールでのインタビューをお願いしたところ、こころよく引き受けて下さいました!

nr1_50per

(サンクトペテルブルクからフィンランド湾を臨むアレクサンダー・ゾロトフ氏。私はこの写真を見るまで、もっと何となく老賢者のような風貌の方を想像していました!後註:1983年生まれだそうです。)



おそらくこのようなインタビューは、他に類がない、興味深い内容だと思われますので、ぜひともSunVoxユーザーや、デスクトップ・ミュージシャン、音楽ソフト関係者、SunVoxを愛する者や憎む者など全ての方に読んでいただければと思います。



以降インタビュー内容:


質問者:waki(以降W)
回答者:Alexander Zolotov氏(以降A)


W:まず最初に、あなたに最大級の感謝と敬意を表しておきたいと思います。というのも、あなたは「SunVox」のような、天才的で偉大なソフトウェアを作り上げた方だからです。私はSunVoxで音楽を作ることが大好きだし、また、日本の芸術大学で教育用のツールとして使ってもいます。

A:ありがとう!

W:あなたはエカテリンブルグに住んでいるんですよね。そこはどのような都市ですか?

A:はい、エカテリンブルグはウラル山脈にある、大きくて美しい街です。独特の雰囲気があり、変化に富んだ長い歴史を持っています。ご存知かもしれませんが、ロシア最後の皇帝が殺されたところです。また、ソヴィエト連邦時代、ロシア構成主義建築の主要なセンターのひとつがここにありました。そして、Polivoksシンセサイザーが開発された街でもあります。

W:あなたは、ご自分のことをどのような人間だと考えていますか?

A:好奇心旺盛なオタクで、アーティストで、音楽家です。今も昔もずっとそうです。

W:あなたが音楽家・エンジニアとして受けてきた教育や、キャリアについて教えてください。

A:私はウラル工科大学でシステムエンジニアの勉強をしました。しかし実はもっとずっと以前に、兄からプログラムの基礎を教えてもらっていました。もっと前の話になりますと、私は1995年に、初めてFastTracker2を使って、デモシーンの驚くべき世界に飛び込んでいました。

W:あなたはソフトウェアを仲間たちと作っているのですか?WarmPlace.ru(註:アレクサンダー・ゾロトフ氏のサイト)には何人の人がいるのですか。

A:私一人でやっています。

W:「NightRadio」というのはあなたのアーティストネームですよね。「Pavel Ti」はあなたの友人ですか?彼はYouTubeにSunVoxのすぐれた動画をたくさん上げていますよね。

A:はい、私の最初のニックネームは「Observer」というもので、2000年代の初めころに「NightRadio」に変えました。「Pavel Ti」 は私のオンライン上の友人で、SunVoxのすぐれた達人です。彼の音楽や動画はとても気に入っています!おすすめですよ!


「SunVoxについて」


W:SunVoxの、設計上・使用法・哲学に関する、主なコンセプトはどのようなものですか。どのようなユーザーを想定していますか。

A:SunVoxの基本的なコンセプトは、どこでも、どんな機器のどんなシステム上でも、殆ど同じように音楽を作ることができる能力を持っているということです。
高性能なコンピュータでも、アンドロイド2.3の古い携帯電話でも問題ありません。

私がまず最初に想定しているユーザーは、音で実験をするのが好きで、新しいことに挑戦することを恐れない人たちです。

W:近年では、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を使った音楽制作が主流になっていると思います。DAWとSunVoxとの違いはどこにあると思われますか?

A:通常、DAWというものは、MTR(マルチトラックレコーダー)のメタファーとして作られていると思います。しかしSunVoxの心臓部分はモジュラーシンセにあり、トラックという概念は、ここではそれほど重要ではなく、やや抽象的に扱われています。

W:それでは、SunVoxのDAWに対する優位性はどんなところにあるとお考えですか。

A:
1.まずはトラッカーの持っている能力です。たしかに、トラッカーは習得するまでに少し時間がかかりますが、それだけの価値があります。
トラッカーでは、いろいろ優れた効果を出すことが可能で、キーボード(註:コンピュータのキーボードのことだと思われる)さえあれば、他のタイプのシーケンサーよりも素早く入力できます。
これは一種のテキストエディタのようなもので、技術があれば非常に速く入力することが可能なのです。

2.SunVoxは微分音を扱うことが出来、シンセやサンプラーなどのすべてのモジュールでそれを行うことが出来ます。

3.SunVoxには無限に自動生成する音楽のためのツールが備わっています。


W:あなたがSunVoxの開発を始めたのはいつですか?SunVoxの歴史を教えてください。

A:これは、SunVoxの最初期のコンセプト図です(2006年3月)。

sunvox_concept

見てお分かりのように、もともとこれは、トラッカーとして計画されたものではありませんでした(笑)。

私が考えていたのは、ピアノロールを使ったシンプルな音楽エディタと、モジュラーシンセとを組み合わせたものでした。

プログラムコードの一部は、私がそれ以前に取り組んでいたプロジェクト、「PsyTexx」というMOD/XMタイプのトラッカーに基づいています。

SunVoxの最初のプロトタイプは、PalmOSとWindowsCE用に2007年に発表されました(下の写真をご覧下さい)。

sunvox2 sunvox1

SunVoxで作られた最初の曲は「Timeless」(2007)といいます。


W:何故あなたは今でも、SunVoxをバージョンアップし続けているのですか?また、各バージョン間の互換性については、どう考えていますか?

A:SunVoxは、私にとってはメインの楽器にあたるものです。私はいつも音楽的な知識や技術を向上させ続けているし、それにつれてプログラムも成長しています。

バージョンが新しくなっても、古いバージョンで作った曲データを正しくロードすることができます。しかし、逆に新しいバージョンで作った曲を古いものでロードした場合には、いくつかのデータが失われます。

SunVoxは異なるプラットフォーム間で、大きな違いなく動かすことが出来ます。だから、他の音楽アプリのように、コンピュータと携帯との間で分け隔てする必要がないのです。

W:ときおり私は、他のすぐれたソフトウェアが、バージョンアップを繰り返しているうちに、新しい特長が備わるけれども、元々持っていた良さや、動作の軽さを失ってしまって、がっかりすることがあります。
このような現象をあなたはどのように思いますか?SunVoxの最新バージョンは、ロースペックなマシンでもまだ動きますか?

A:それは本当に、プログラムやプラットフォームによりますね。私はSunVoxが古いデバイスで動かなくなるようなことはしたくないです。

しかし時々そういうことは起こります。様々な理由からです。たとえば、PalmOSのバージョンでは、SunVoxはもう、そのプラットフォームの限界を越えてしまっています。

また、その逆のことも起こりえます。SunVoxはまだとても古いWindowsCEのマシンでも動きます。なぜでしょうか?それはこのシステム上で、開発を続けやすいからです。また、私がLinux上で動くWinCEコンパイラを持っているからでもあります。

W:私は、サンプリングの波形データについて、曲の中に相対パスで記録するのではなく、波形ごとプロジェクトデータの中にコンパイルしてしまうやり方は、とても素晴らしいと思います。これは意図的にやっているのですか。

A:これは古いトラッカー(MOD, S3M, XM, IT)から続いている良き伝統です。私は曲データの中に全てが含まれているのが好きなのです。

W:あなたは、SunVoxのような非常に優れたソフトウェアを、なぜ無償で人々に配布しているのですか。

A:すべてのバージョンが無料というわけではありません。iOSとAndroidでは有料です。それは単純に、このマーケットが、ソフトウェアを売るのに一番便利だからです。

他のプラットフォームは、ソフトを宣伝するのに都合が良いです。私は少なくともしばらくの間、この方針を変えるつもりはありません。

W:世界中でどれくらいの数の人々がSunVoxを使っているとお考えですか?世界の中では、どのエリアで、より多く使われているでしょうか?(たとえばロシアとか…)

A:正確なユーザーの数は分かりません。しかしおおよその配布状況では、アメリカ合衆国(30%未満)、ロシア、UK、ドイツ・・・などの順になっています。

W:あなたの好きなSunVoxのアーティストを教えてください。

A:幸運なことに、今は沢山の非常にすぐれたSunVoxアーティストたちが存在しています。以下が私のお気に入りです。

Echo's Dream Diary & mk7
Ayoshutduff
Numrah
Transient
HEAVY SYSTEMS, Inc
Kiberaver
Pavel Ti
BLUE NAVI
Game Jam!
SolarLune

W:SunVoxでトラッカーのシステムを採用した理由は何ですか。他にお好きなトラッカーのソフトはありますか。

A:個人的には、音楽を作るうえで、トラッカーには有利な点があると考えています。先ほど書いたように、テキストエディタでタイピングするのに似ているからです。

私は今までいろいろなトラッカーに触れてきました。FastTracker, Scream Tracker,
Impulse Tracker, Buzz, Skale Tracker, OpenMPT, Renoise。

どれも好きですが、どれにも一長一短あります。だから私は、自分自身で作ることにしたのです(笑)。

W:どうしてSunVoxをこれほど多くのプラットフォームで動くようにしようとしたのですか?そして技術的には、どうやってそれが可能になるのですか。

A:それは、その方が楽しいからです(笑)。私はフレキシブルで万能なシステムが好きなのです。



「最新のアップデート(1.9.4)について」



W:最新のバージョン1.9.4で、最も際立った特徴はスペクトログラムだと思いますが、他に強調しておきたいところはありますか?

A:
1.「MultiCtl」モジュールの新しいコントローラ、「Response」によって、すべてのコントローラの値を、簡単になめらかに変化させることが出来ます。これは使いやすさという点で大きな進化だと思います。

2.コマンドエフェクトの24番から29番は、毎回違った音を発生させるもので、予想できない音楽を作ることができます。


W:「Distortion」モジュールのタイプが、( lim / sat )から( clipping / foldback / foldback2 / foldback3 / overflow )へと増えました。

ということはまず、「lim」と「clipping」は同じもので、同様に「sat」と「foldback」が同じものだと考えてよいですか?

A:その通りです。

W:それでは、clipping / foldback / foldback2 / foldback3 / overflowのそれぞれのタイプの効果の違いを説明していただけますか?

A:これは写真を見ていただいた方が分かりやすいでしょう。

「clipping」
dist0

「foldback」
dist1

「foldback2」
dist2

「foldback3」
dist3

「overflow」
dist4



W:「Analog generator」には新たに7つのノイズ波形が加わりました。なぜこれらのノイズを加えようと思ったのですか?これまであったノイズ波形は、サンプリングによるものだったのですか。

A:はい、元からあった「ノイズ」波形は、32kのランダムなサンプルのループでした。新しいタイプのものは、様々なカラーの、無限に生成する本物のノイズ波形です。
それぞれのカラーのノイズは、違ったように知覚されます。(参照:Wikipedia) 



「未来の計画について」


W:SunVoxや、WarmPlace.ruの他のソフトウェアについて、新たな開発の予定はありますか?もしくはあなたの個人的な、生活上のプランはありますか(新しい家を買うとか、飲んだことない紅茶を試してみるとか、どこか旅行するとか、子供を持ってみるとか…)

A:SunVoxをさらに発展させる計画はありますし、他の音楽・サウンド・グラフィックのアプリについても同様です。また、ハードウェアの計画もあります。あなたが先ほどリストに上げた、個人的な計画以外はすべてやろうと思っています(笑)。

やることは沢山ありますが、時間は限られています。しかし、やれる限りのことはしようと思います。

Alexander Zolotov (NightRadio)

~インタビューここまで






nr2_50per

*ロシアの格闘家を思わせる容貌の、アレクサンダー・ゾロトフ氏。エカテリンブルクでVirtual ANSのプレゼンをしているところだそうです。

ゾロトフさん、貴重な情報を教えてくださって、ありがとうございました!


SunVoxのWiNOWSとMacOSバージョンなどは、上記 WarmPlace.ru から無料で提供されています。iOS版はapp store、Android版はGoogle Playでそれぞれ購入することが出来ます。





不肖wakiのSunVoxを使った作品「russian love」をここにこっそりと置いておきます。



おはようございます。

 

京都は夏真っ盛りです。

 

何だか例年よりセミが多いような気がしますけど、気のせいですかね・・・。

 

 

今回は、スロバキアのクレイジーなシンセメーカー、VSTZONEのLadislav Trojak氏への単独インタビューです。

 

Youtubeチャンネルでのレビューがきっかけで、このインタビューが実現しました。

 

ここのように、音楽制作に使えるシンセサイザーを開発して、無料で配布しているところって結構たくさんあるんですが、彼らが一体何のために、どういうつもりでこれら無料のツールを作っているのか、前々から興味がありました。

 

今回、Ladislav Trojak氏が快くインタビューに応じて下さったので、このあたりの疑問がちょっと解けました。

 

原文と和訳を下に載せますので、ぜひ読んでみてください。

 

ここで初めて発表になる情報もあるので、VSTシンセのファンは要注目かもしれませんよ!

 

 

以下インタビュー和訳

 

 

VSTZONEはどこにあるのですか?その街はどんなところですか?

 

VSTZONEはスロバキアのコシツェという街にあります。小さな街で、私のようにクレージーな人ばかりが住んでいます(笑)・・・というのは冗談で、世界のどこにでもあるありふれたところです。

 

VSTZONEには何人のスタッフがいるんですか?

 

最初は4 人でスタートしました。今は、そうですね。一人か、二人かな。

 

メンバーの役割分担を教えてください。

 

今残っているのは私だけです。クレージーなアイディアを持った男で、プラグインを作っています。あと、ウェブサイトとフェイスブックを担当している人がいます。

 

フェイスブックやツイッターのページで、ボーダーの服を着ている人達が写っていますが、彼らがスタッフですか?

 

ああそうですね・・・。これは昔の写真で、メンバーが4人いたころのものです。

 

あなたのVSTデザイナーとしてのバックグラウンドと、受けた教育について教えてもらえますか?

 

そうですね、特にバックグラウンドとか、教育の経験とか、そういうものは持っていません。これはただの趣味で、リラクゼーションで、またトレーニングの一環なのです。私はバランスを好む方なのですが、体のトレーニングの方は足りていませんね。音楽とVSTは、私の脳と心のトレーニングのうち、それほど大きな割合を占めていません。

 

私があなたのシンセサイザーを「狂っている」と表現したとき、いやな気はしませんでしたか?

 

いいえ。なぜですか?あなたのレビューは素晴らしかったし、本当に可笑しかったです。あのシンセは変な音しか出ないように見えるかもしれませんが、ちゃんとしたいい音も出るんですよ。ここに私がEclipsisだけで作った曲を貼っておきます。これはまともなサウンドです。

https://soundcloud.com/trojakew/strange-event

 

他のシンセとくらべて、VSTZONEのシンセの主な特徴は何だと思いますか?

 

そうですね、これらのプラグインはもともと、私の個人的な利用のためのものだったんです。あとで公開して配布することにしました。だからこれらは他のシンセに比べて、いくつか基本的な部分を欠いていたり、逆に他のシンセにない特徴を持っているんです。たとえば、EclipisisのFM変調とかはユニークですよね。

 

ECLIPSIS と U.F.O.ZEの違いは何だと思いますか?

 

U.F.O. ZEは私が作った最初のプラグインを少しアップグレードしたものです。じつはU.F.O.2のベータ版というのがあったんですが、これは没になり、代わりにEclipsisが生まれました。U.F.O.の方がよりシンプルな減算式シンセサイザーで、Eclipsisはもっと多くの変調やFM変調などの機能を持っています。機能や音の違いはかなり大きいです。Eclipsisにはこれまでにないサブプリセット機能を実装しています。また、Eclipsisはシンプルで使いやすいインターフェースを目指しています。

 

なぜVSTZONEの楽器はこんなに多くの変調機能を持っているのですか?

 

そうですね、多く見えるかもしれまんが、他にもっと変調機能を持っているシンセはいくらもありますよ。実際には、私たちのシンセサイザーの変調機能は平均以下だと思っています。

 

なぜ変調に複雑な数学の関数を使っているのですか?

 

もしIkedaやLorenz、Rosslerなどのアトラクターを使ったLFOのことを指しているなら、その理由は簡単です。より複雑な変調の形を得ようとすれば、ふつうはより多くのソースを組み合わせる必要がありますが、そうするとCPUパワーを食うことになり、他の部分でソースを減らさなくてはならなくなります。その代わりに、(これらのアトラクターを使えば、)一つのソースで複雑な変調を得ることが出来るのです。

 

VSTインストゥルメントで最も重要な要素は何だと思いますか?

 

楽器は使いやすいものであるべきです。何百万もの機能は必要なくて、使える機能があればいい。かつて見たことがないような、革命的で最高にクールな機能とかだけじゃなくてね。

マーケティングは詐欺です。私にとって最も重要なのは、最低限もしくは完全にフリーなライセンスです。お金を払って何かを買うのに、なぜ問題を引き起こすだけの馬鹿げたプロテクションでアタマを悩ませなければならないのでしょうか?

 

VSTを作って無料で人々に配布する主な理由はなんですか?

 

前に言ったように、これらは自分のために作ったものですが、シェアしなければ無駄になってしまうからです。本当に何の目的もないんです。いや、もしひとつあるとすれば、なんの見返りも求めずに、他の人のために何かを作ることができる、ということを証明したかったのかもしれません。喜んでもらえればいいんです(笑)。

 

他のメーカーのVSTインストゥルメントで、何か好きなものはありますか?

 

そうですね、私自身は持ってないし良く知らないんですが、Zebra2はいいと聞きます。でも私自身はほとんどEclipsisばかり使ってます(笑)。

 

新しいプラグインを作る計画はありますか?

 

はい。もうほとんど出来ていて、名前はStratumというユニゾンエフェクトです。あとAmplio(註:VSTZONEのマルチバンドエフェクト)のアイディアに基づいたもう一つのエフェクトに着手しています。こちらはAmplioにふつうあまり見ないような機能を追加したものになるでしょう。

 

これがStratumのスクリーンショットと情報です。

1bf13d17.png

各ボイスの音量・定位をコントロールできるユニゾンエフェクト、モノラルからステレオを得る、同期可能なピッチ・ディレイ、ハーモニック・エキサイター、ハーモナイザーとして使用可能。

Stratumは入力音よりも壮大で、豊かなサウンドを得るように作られています。8音までのステレオサウンドを付加できます。16ボイス(8チャンネルステレオ)のすべてが独立してコントロール可能な操作子を持っています。

 

デチューン:半音ずつ±2オクターブまで。±半音までの100段階のファインチューン

パン・音量コントロール:

ディレイ:最大2秒の遅延、ホストに同期可能

HPF:

ゲインリダクション:コンプレッションなしの音量調整。出力信号が入力信号を超えることはありません。

 

最後に、ファンやクリエイターに対して何か言いたいことがあれば教えてください。

 

えーと、何と言ったらいいか分かりませんね・・・そうですね、まあ・・・私たちのプラグインを楽しんでください(笑)。

 

 

Original(English):

 

Where are you located in? How do you describe your city?

VST Zone is in Slovakia - Kosice city. It is small city full of crazy people like me :). No it is not different from any other small towns anywhere in the world.

 

How many people are involved in VST ZONE at the moment?

At the beginning there were 4 people. Now I'm not sure. One maybe two.


And can you tell the each role of the members?

What's left is me. Guy with crazy ideas and maker of the plugins. There is also 2nd responsible for web and also facebook page.

 

Are the guys with border shirts in your FB / twitter pages members of VST ZONE?

Yes and no. This is photo from the past when VST zOne had 4 people.

 

Can you tell me your background / educaion as VST instruments designers?

Well there is actually not background, no education. This is only fun, relaxation and also it is part of my training. I like balance so training body is not enough. So music and vst's are small part of my brain/mind training.

 

Didn't you feel insulted when I described your synths as "insane"? (sorry...)

No. Why should I? Actually your review was cool and really funny. It may look it is only for crazy stuff but you can get some nice sound out of it. Here is track I made with Eclipsis only and it is not crazy sounding https://soundcloud.com/trojakew/strange-event

What do you think is the main feature of VST ZONE's instruments compared to the other vender's stuff?

Well you need to know that every plugins were made for my own personal use. Then I decide to share my work and give it to people. So they may lack some basic feature compared to any other synth but also have some stuff that other plugins doesn't have. For example FM modulation in Eclipsis is unique.

 

What do you think is the difference between ECLIPSIS + U.F.O.ZE?

U.F.O. ZE is small upgarde to my first plugin I made. There were U.F.O.2 beta that was canceled and Eclipsis was born instead. U.F.O. is more like simple substractive synth while Eclipsis also have other features like extended modulation and unique FM modulation. Difference is quite huge regarding features and sound too. Eclipsis have implemented subpresets feature that was not something you can see before. Eclipsis is also attempt to make simple and user friendly UI.

 

Why are VST ZONE's instruments have such a many ways of modulation?

Well maybe it's look like it have many but there are synths that have much more modulation options. Actually I think modulation options in our synths is below average.

 

Why do you use complex mathematic functions for modulation?

If you mean LFO based on Ikeda, Lorenz and Rossler attactors then the reason is simple. In order to make more complex shape for modulation user need to combine more sources. That also will require more processing power and user will lose possible source for other sound shaping. So instead he can choose just this one source to make more complex modulation.

 

What do you think is the most important factors of VST instruments?

Instrument should be user friendly. It doesn't need to have millions of features but need to have something that is usable and not just revolutionary ultracool never before seen feature - marketing hype. For me most important is minimal or no protection/licensing. Why if you pay for something you need to bother with some crazy protection that only cause problems. 

 

What is your main purpose to supply free VST instruments to people?

Well as I said before stuff I made is made for me but it will be a waste not to share with my work with others. There is no real purpose. Well maybe there is - to show that you can make something for others without asking them for something in return. Smile is enough :).

 

Do you have any your favorite VST instruments made by the other venders?

Well I don't have but so far from what I saw and hear Zebra 2 is nice. But I don't have it. I use mostly Eclipsis :).

 

Do you have any plans to make new stuff in the future?

Yes. There is almost ready plugin named Stratum which is an unison effect but I'm working on another effect that is based on Amplio idea. It will be next gen Amplio with some really interesting features you can’t see everyday.

Here is screen and some info about Stratum:
1bf13d17.png

Create unison effect with full control of each voice amplitude and stereo position, create stereo from mono, make synced pitched delay or use it as harmonic exciter or harmonizer.
Stratum is designed to create bigger, fuller sound from incoming audio signal. Create (up to) 8 additional stereo voices. All of 16 voices have own individual controls to tweak.

Detune - semitone in range up to +-2 octaves and finetune in cents up to +-1 semitone
Pan & amplitude control
Delay - max 2 seconds with options to sync with host
Highpass filter
Optional gain reduction - scale amplitude without adding compression so output signal will not exceed input signal level.

 

Let me know anything you want to say to your fans / creators...

Hmm not sure what to say. Well, maybe just enjoy our plugins. :)

 

 

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Easy + Nice Compilation Vol.1 "AIDA"

 

67982955.jpg

 

レーベル初のコンピレーションアルバムです。

国内外の14アーティストが参加。

 

それぞれのアーティストの情報はここか、BANDCAMPの各トラックのページで見ることができます。

 

今回のコンピレーションは、レーベルのサンプラー的な意味あいもありますが、同時に、一枚のアルバムとして通して聴いたときに、心地よい流れが出来るように、配慮して編集しました。

 

ぜひ通して聴いていただければと思います。

 

アンビエント、エレクトロニカ、IDM、テックハウス、ロックンロール、ミュージック・コンクレートなどが並んだ意欲作です。

 

BANDCAMP

iTunes

iTunes (英語)

AMAZON MP3

BEATPORT

junodownload

CLONE DGTL

trackitdown  

 

などのサイトで買うことができます。

 

 

レーベルサイト

 

レーベル作品の試聴+購入(Bandcamp) 

 

YouTube チャンネル


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